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電子比熱の導出 ~式変形の過程も~

●この記事は MCC Advent Calendar 2017 - Adventar の13日目の記事です。

今回のテーマは電子比熱の導出です(物理系ですね).やる前は大したことない計算と思っていましたが,実際計算してみると,そこそこテクニックが必要なところがあってなかなか前進できませんでした.今回はそれも含めて,導出の過程を追っていきます.

電子比熱


まず,電子比熱はどういうものかというと,電子系の全エネルギ$U$を温度$T$で微分したものです.式で書くと次のようになります.
$$
\begin{eqnarray*}
C_{\rm el} &=& \PDif{U}{T}
\end{eqnarray*}
$$

導出


まず,電子系の全エネルギ$U$は
$$
\begin{eqnarray*}
U &=& \int_0^\infty \D{E}~ D(E) f(E)
\end{eqnarray*}
$$
で与えられます.ただし,$D(E)$は状態密度関数,$f(E)$はフェルミ・ディラック分布関数で,
$$
\begin{eqnarray*}
f(E) &=& \frac{1}{ \exp\Pt{ \frac{E - E_{\rm F}}{ k_{\rm B}T } } + 1 }
\qquad \Pt{ E_{\rm F} : \text{Fermi energy} }
\end{eqnarray*}
$$
です($E_{\rm F}$はフェルミエネルギ).ここで$U$をそのまま$T$で微分すると電子比熱が求められそうですが,実際うまくいきません.そこで,電子の総数$N$を導入します.
$$
\begin{eqnarray*}
N &=& \int_0^\infty \D{E}~ D(E) f(E).
\end{eqnarray*}
$$
これは温度に依存しませんので,温度の微分は0です(電子の数は温度で変わるはずはない).したがって,$E_{\rm F} N$を$U$から引いたものを微分します.
$$
\begin{eqnarray*}
C_{\rm el} &=& \PDif{U}{T} = \PDif{U - E_{\rm F} N}{T} \\
&=& \int_0^\infty \D{E}~ (E - E_{\rm F}) D(E) \Dif{ f(E) }{T}.
\end{eqnarray*}
$$
ここで
$$
\begin{eqnarray*}
x &=& \frac{E - E_{\rm F}}{ k_{\rm B}T }
\end{eqnarray*}
$$
と変数変換を行うと.
$$
\begin{eqnarray*}
C_{\rm el}
&=& \int_{-E_{\rm F} / k_{\rm B}T }^\infty
\D{x}~ \Dif{E}{x} (k_{\rm B}T x) D(E) \Dif{x}{T} \Dif{ f(x) }{x} \\
&=& \int_{-E_{\rm F} / k_{\rm B}T }^\infty
\D{x}~ (k_{\rm B}T) (k_{\rm B}T x) D(E) \Pt{-\frac{x}{T}} \Dif{ f(x) }{x}
\end{eqnarray*}
$$
となります.低温極限を考えると,$-E_{\rm F} / k_{\rm B}T \cong -\infty$と近似できます.また,$\D{f(x)}/\D{x}$は$x = 0$,すなわち$E = E_{\rm F}$付近でしか値を持たないので,その範囲における$D(E)$はあまリ変化しないと考えます.よって$D(E) \cong N(E_{\rm F})$と近似し,積分の外へ出してしまいます.したがって,次のようになります.
$$
\begin{eqnarray*}
C_{\rm el}
&\cong& -k_{\rm B}^2 T N(E_{\rm F}) \int_{-\infty}^\infty
\D{x}~ x^2 \Dif{ f(x) }{x}.
\end{eqnarray*}
$$
この被積分関数は偶関数であるので,$[0,~\infty]$の積分を2倍したものに変換できます.
$$
\begin{eqnarray*}
\int_{-\infty}^\infty \D{x}~ x^2 \Dif{ f(x) }{x}
&=& 2\int_0^\infty \D{x}~ x^2 \Dif{ f(x) }{x} \\
&=& 2 x^2 f(x) \Bigg|_0^\infty - 4 \int_0^\infty \D{x}~ x f(x) \\
&=& -4 \int_0^\infty \D{x}~ \frac{x}{\E{x} + 1}.
\end{eqnarray*}
$$
2行目からは部分積分を行いました.その結果出てきた積分は,無限等比級数の和の公式を利用して求めます.
$$
\begin{eqnarray*}
&& -4 \int_0^\infty \D{x}~ \frac{x}{\E{x} + 1} \\
&=& -4 \int_0^\infty \D{x}~ x\E{-x} \frac{1}{1 - (-\E{-x})} \\
&=& -4 \int_0^\infty \D{x}~ x\E{-x} \sum_{n=0} (-\E{-x})^n \\
&=& -4 \sum_{n=0} (-)^n \int_0^\infty \D{x}~ x\E{-x} \E{-xn} \\
&=& -4 \sum_{n=0} (-)^n \int_0^\infty \D{x}~ x \E{-x(n+1)} \\
&=& -4 \sum_{n=0} (-)^n \frac{1}{(n+1)^2} \\
&=& 4 \sum_{n=1} \frac{ (-)^n }{n^2}.
\end{eqnarray*}
$$
最後の積分は部分積分で計算しました.さらに,最後の行で級数の添字$n$の開始位置を0から1に移行しました.

残った級数はどうするか


 さて,ここからが山場ですが,先程出てきた級数は,そう簡単に計算できそうにありません.実際,自分で計算したときはここが一番の悩みどころでした.しかし,$x^2,~(-\pi \leq x \leq \pi)$のフーリエ級数展開の表式を利用すると,きれいな答えがでることがわかりました.

まず,$x^2$をフーリエ級数展開するのですが,偶関数ですから,$\sin$の項はなく,
$$
\begin{eqnarray*}
x^2 &=& a_0 + \sum_{n=1} a_n \cos(nx)
\end{eqnarray*}
$$
となります.このフーリエ係数は,
$$
\begin{eqnarray*}
a_0 &=& \frac{1}{2\pi} \int_{-\pi}^{\pi} \D{x} x^2 = \frac{\pi^2}{3}, \\
a_n &=& \frac{1}{2\pi} \int_{-\pi}^{\pi} \D{x} \cos(nx) x^2 = 4 \frac{(-)^n}{n^2}.
\end{eqnarray*}
$$
ですので,したがって,$x^2$は
$$
\begin{eqnarray*}
x^2 &=& \frac{\pi^2}{3} + 4\sum_{n=1} \frac{(-)^n}{n^2} \cos(nx)
\end{eqnarray*}
$$
と表せます.ここで$x=0$を代入して整理すると,
$$
\begin{eqnarray*}
4\sum_{n=1} \frac{(-)^n}{n^2} = -\frac{\pi^2}{3}
\end{eqnarray*}
$$
と求められます.

答え


以上より,電子比熱は次のようになります.
$$
\begin{eqnarray*}
C_{\rm el}
&=& -k_{\rm B}^2 T N(E_{\rm F}) \int_{-\infty}^\infty \D{x}~ x^2 \Dif{ f(x) }{x} \\
&=& -k_{\rm B}^2 T N(E_{\rm F}) \Pt{ -4 \int_0^\infty \D{x}~ \frac{x}{\E{x} + 1} } \\
&=& -k_{\rm B}^2 T N(E_{\rm F}) \Pt{ 4\sum_{n=1} \frac{(-)^n}{n^2} } \\
&=& -k_{\rm B}^2 T N(E_{\rm F}) \Pt{ -\frac{\pi^2}{3} } \\
&=& \frac{\pi^2}{3} N(E_{\rm F}) k_{\rm B}^2 T.
\end{eqnarray*}
$$

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