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Klein-Gordon方程式の離散化

Klein-Gordon方程式の離散化を行います.また,その結果より,伝播関数を計算します.

Klein-Gordon方程式


Klein-Gordon方程式は,波動方程式に質量項が付いたものです(導出は検索すればいくらでもあるでしょう).
$$
\begin{eqnarray*}
\left( \Box + \mu_\gamma^2 \right) \phi(x) &=& 0.
\end{eqnarray*}
$$
\( \Box = - \P_{(ct)}^2 + \P_x^2 + \P_y^2 + \P_z^2 \)はd'Alembertianという,時空間の二回微分演算子です.また,\( \mu_\gamma = mc/\hbar \)は質量を表します(これがなければ波動方程式に帰着する).
さらに注意してほしいのが,単純に\( x \)と書いていても,4次元ベクトル\( x = (ct,~x,~y,~z) \)をあらわしていることです.3次元では\( \boldsymbol{x} \)のように太字で書いたりしましたが,相対論などで,4元ベクトルなどを表記するときは,そうしないのです.

離散化の前に


離散化前に,Wick回転をします.それは,時間を虚数時間\( \tau = \mathrm{i} t \)に置き換えることです.こうすると,4次元内積でも時間成分が正になり,4次元Euclid空間と同じになって扱いやすくなるのです.例えば,d'Alembertianは次のようになります.
$$
\begin{eqnarray*}
\Box &=& \P_x^2 + \P_y^2 + \P_z^2 + \P_{c\tau}^2.
\end{eqnarray*}
$$
Wick回転後,時間微分が先頭から最後尾へ行きました.これは,時間は0番目の成分として扱っていたのが,虚時間の場合は4番目としたい,という意向を汲んでいるからです.時間成分を最後尾へ追いやり改番し,0-indexを1-indexにした,というと分かりやすいかな?以降,総和を遣い,次のように書くこともします.
$$
\begin{eqnarray*}
\Box &=& \sum_{\rho = 1}^4 \P_\rho^2.
\end{eqnarray*}
$$

離散化


離散化です.そのため,4次元格子間隔\( a \)を導入します.信号処理でいう,サンプリング時間です.これで,波動関数を離散化すると,
$$
\begin{eqnarray*}
\phi(x) & \longrightarrow & \phi(na) = \phi[n]
\end{eqnarray*}
$$
となります.四角い括弧[]は,離散化済みの関数であることを示します(信号処理でよく使われる表記).さらに,その引数である\( n \)は4元ベクトルで,整数の成分を持ちます.
$$
n = (n_x,~n_y,~n_z,~n_{c\tau}) = (n_1,~n_2,~n_3,~n_4).
$$

微分は,差分になります.
$$
\P_x \phi = \frac{\phi[n + \hat{1}] - \phi[n]}{a}.
$$
ここで,\( \hat{1} \)は1の方向,即ち\( x \)方向の単位ベクトルです.そのため,\( +\hat{1} \)は\( x \)方向に\( a \)だけ進むことを表します.図で表すと,次のような概念です.
figDescreteScalarField
2次微分も,
$$
\begin{eqnarray*}
\P_x^2 \phi &=& \frac{(\phi[n + \hat{1}] - \phi[n]) / a - (\phi[n] - \phi[n - \hat{1}]) / a }{a}\\
&=& \frac{\phi[n + \hat{1}] - 2\phi[n] + \phi[n - \hat{1}]}{a^2}.
\end{eqnarray*}
$$
ただし,前進差分と後退差分がそれぞれ用いられていることに注意してください.この結果を使い,\( \Box \phi[n] \)を計算すると,
$$
\begin{eqnarray*}
\Box \phi &=& (\P_x^2 + \P_y^2 + \P_z^2 + \P_{c\tau}^2) \phi = \sum_{\rho = 1}^4 \P_\rho^2 \phi \\
&=& \sum_{\rho = 1}^4 \frac{\phi[n + \hat{\rho}] + \phi[n - \hat{\rho}]}{a^2} + \frac{8}{a^2} \phi[n].
\end{eqnarray*}
$$
これと,質量項を合わせて,Klein-Gordon方程式となります.
$$
\begin{eqnarray*}
\left(\Box + \mu_\gamma^2 \right) \phi
= \sum_{\rho = 1}^4 \frac{ \phi[n + \hat{\rho}] + \phi[n - \hat{\rho}] }{a^2}
- \left( \frac{8}{a^2} + \mu_\gamma^2 \right) \phi[n].
\end{eqnarray*}
$$

伝播関数


伝播関数は,微分演算子の逆を行うようなものです.非斉次の場合(右辺を0ではなく,「源」を加えること)を考え,
$$
\begin{eqnarray*}
\left(\Box + \mu_\gamma^2 \right) \phi(x) = J(x)
\end{eqnarray*}
$$
としてみれば,特殊解が
$$
\begin{eqnarray*}
\phi(x) = \frac{1}{\Box + \mu_\gamma^2} J(x)
= \int \D{^4x'} \Delta_{\rm F}^{0}(x - x') J(x')
\end{eqnarray*}
$$
と,伝播関数\( \Delta_{\rm F}^{0} \)と源\( J \)の畳み込みで解けます.この伝播関数を,数学ではグリーン関数,信号処理や制御では伝達関数と呼んでいます.
 この\( \Delta_{\rm F}^{0} \)を計算するにはフーリエ変換が簡単でした.同様に,離散の場合でも,離散フーリエ変換すれば良いのです(信号処理でいうDTFT,離散時間フーリエ変換に相当).ただし,4次元フーリエ変換で,順変換は総和,逆変換は積分となっていることに気を付けます.例えば,離散空間\( n \)から,波数空間\( K \)へ移行する変換ついは次の通りです.
$$
\begin{eqnarray*}
\phi[n] &\xrightarrow{\wedge}& \hat\phi(K) = \sum_{n = -\infty}^{+\infty} a^4 \exp(-\I nK) \phi[n], \\
\hat\phi(K) &\xrightarrow{\vee}& \phi[n] = \int_{-\pi}^{+\pi} \frac{\D^4 K}{(2\pi)^4} \exp(\I n K) \hat\phi(K). \\
&& \qquad (K = ka)
\end{eqnarray*}
$$
ただし,ハット\( \hat{} \)付の関数は,そのフーリエ変換を表します.

伝播関数の計算


まず,離散Klein-Gordon方程式をフーリエ変換します.
$$
\begin{eqnarray*}
&& \left(\Box + \mu_\gamma^2 \right) \phi[n] \\
&\xrightarrow{\wedge}& \sum_{n = -\infty}^{+\infty} a^4 \exp(-inK) \left(\Box + \mu_\gamma^2 \right) \phi[n]\\
&=& a^4 \left[ \sum_{\rho = 1}^4 \frac{\exp(+\I \hat{\rho} K) + \exp(-\I \hat{\rho} K)}{a^2} - \left( \frac{8}{a^2} + \mu_\gamma^2 \right) \right] \hat{\phi}(K) \\
&=& -a^4 \left[ \sum_{\rho = 1}^4 \left( \frac{\hat{\rho} K}{a} \right)^2 \sinc^2 \left( \frac{\hat{\rho} K}{2} \right) + \mu_\gamma^2 \right] \hat{\phi}(K).
\end{eqnarray*}
$$
これの逆数にし,フーリエ逆変換すれば,離散空間での伝播関数を得ます.
$$
\begin{eqnarray*}
\therefore \Delta_{\rm F}^{0} [n] &=&
\int_{-\pi}^{+\pi} \frac{\D^4 K}{(2\pi)^4} \exp(\I n K) \frac{1}{a^4} \dfrac{-1}{\displaystyle \sum_{\rho = 1}^4 \left( \frac{\hat{\rho} K}{a} \right)^2 \sinc^2 \left( \frac{\hat{\rho} K}{2} \right) + \mu_\gamma^2} \\
&=&
\int_{-\pi/a}^{+\pi/a} \frac{\D^4 k}{(2\pi)^4} \exp(\I n ak) \dfrac{-1}{\displaystyle \sum_{\rho = 1}^4 (\rho k)^2 \sinc^2 \left( \frac{\hat{\rho} ak}{2} \right) + \mu_\gamma^2}.
\end{eqnarray*}
$$

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