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ラプラシアンの座標変換など

この記事はMCC Advent Calender 2016 の13日目の記事です.

「ラプラシアンを極座標表示に変換せよ」などという問題,一度はやったことがあると思います.普通なら合成関数の微分の嵐を切り抜けるんでしょうが,大変でイヤになりそうになった記憶があります.
 しかし,世の中には便利な方法があるもので,以外に簡単に変換できたりします.今回は,共変微分を利用した方法を見ていきます.

具体的な形


 結論から言ってしまうと,スカララプラシアン(スカラ関数に作用するもの)は,次のような形で書けるということです.
$$
\triangle F = \frac{1}{\sqrt{g}} \partial_m (\sqrt{g} g^{mn} \partial _nF).
$$
ここで\( F \)は任意の関数,\( g^{mn},~ g \)は(反変)計量テンソルとその行列式,\( \partial_n \)は空間微分です.これのどこが良いかというと,座標系に依存していないところです.つまり,直交座標まもちろんのこと,極座標だろうが円柱座標だろうがこの形が使えるのです.
 添字にnやmが出てきますが,これはEinsteinの縮約にもとづく描き方です.この式のように,上下で同じ添え字が平衡したら,その添え字について総和をとります.すなわち,総和をいちいち書かずに楽する方法です.
 今回の内容を説明するのに,以下のことが重要になります.

  • 計量テンソル

  • 共変微分

  • 導出の手順(△ = div gradにたどり着くまで)


スカララプラシアンは,△ = div gradとなっているので,それを一般座標でどうなるかを見たいのです.しあし,それを理解するには共変微分の知識が必要です.これは,普通の微分に空間の歪を組み込んで,直交座標のみならず,一般座標に対応させた,というものです.さらに,これには計量テンソルというものが計算に入ってくるので,それも見ていきます.

計量テンソル


 これはベクトル内積を計算するときに出てくるものです.例えば,二次元の微小な線素の二乗長\( \mathrm{d}s^2 \)は,直交座標ではこうかけます.
$$
\mathrm{d}s^2 = \mathrm{d}x^2 + \mathrm{d}y^2 =
[\mathrm{d}x ~ \mathrm{d}y]
\begin{bmatrix} 1 & \\ & 1 \end{bmatrix}
\begin{bmatrix} \mathrm{d}x \\ \mathrm{d}y \end{bmatrix}.
$$
最後になぜか二次形式の形にしました.ここに出た単位行列が直交座標での計量テンソルです.
 では,極座標ではどうでしょう.これは\( (r,~\phi) \)と,半径と角度であらわされますので,次のようになります.
$$
\begin{eqnarray}
\mathrm{d}s^2 &=& \mathrm{d}x^2 + \mathrm{d}y^2 \\
 &=& \mathrm{d}(r \cos(\phi))^2 + \mathrm{d}(r \sin(\phi))^2 \\
&=& \mathrm{d}r^2 + r^2 \mathrm{d}\phi^2 \\
&=& [\mathrm{d}r ~ \mathrm{d}\phi]
\begin{bmatrix} 1 & \\ & r^2 \end{bmatrix}
\begin{bmatrix} \mathrm{d}r \\ \mathrm{d}\phi \end{bmatrix}
\qquad (=\mathrm{d}x^m g_{mn} \mathrm{d}x^n)\\
&=& [\mathrm{d}r ~ r^2\mathrm{d}\phi]
\begin{bmatrix} 1 & \\ & 1/r^2 \end{bmatrix}
\begin{bmatrix} \mathrm{d}r \\ r^2 \mathrm{d}\phi \end{bmatrix}
\qquad (=\mathrm{d}x_m g^{mn} \mathrm{d}x_n)
\end{eqnarray}
$$
ここでも,ベクトルとして\( (\mathrm{d}x^m) = (\mathrm{d}r ~ \mathrm{d}\phi)\)を切り出して二次形式を作っています.そこで出た\((g_{nm})\)が(共変)計量テンソルです.一方で,\( (\mathrm{d}x_m) = (\mathrm{d}r ~ r^2 \mathrm{d}\phi)\)を切り出してみると,\((g^{nm})\)というのが出ました.これは(反変)計量テンソルといいます.
 これを見るに,極座標(に限らず一般の座標でも)ではベクトルの形に共変と反変の二種類があることが見えてきました.両者は計量テンソルを介して関係付けられていて,
$$
x^m = g^{mn} x_n, \qquad
x_m = g_{mn} x^n
$$
という関係にあります.ただし,\( (x^m) \)などは任意ベクトルです.さらに,共変および反変の計量テンソルは互いに逆テンソルの関係にあります(行列でいう逆行列).
$$
g_{mk} g^{kn} = \delta_m^{.n}
$$
 計量テンソルの行列式というものは,基本的に下添字のものに対して定義されます.
$$
g = |(g_{mn})|.
$$
さらにこれは,重責分でお馴染みのヤコビアンの二乗でもあります.

空間微分の記法


 空間微分は,\( \partial/\partial x^m \)などと書くのが正確ですが,
$$
\partial_m = \frac{\partial}{\partial x^m}, \qquad
\partial^m = g^{mn} \partial_n = \frac{\partial}{\partial x_m}
$$
と,簡略化して書きます.例えば,直交座標ではこれをナブラの代わりに書いたりします.
$$
\nabla = (\partial_m) = ( \partial_x,~\partial_y,~\partial_z ).
$$

共変微分


共変微分は,簡単に言えば空間の曲がりも考慮した微分といったものです.実際,通常の微分の拡張になっていて,次のような形になります.
$$
\nabla_m A^k = \P_m A^k + \Gamma_{mn}^k A^n.
$$
第一項のみでは普通の微分です.第二項は空間の曲がりを考慮したために出てきたものです.勿論,\( (x,~y,~z) \)のような直交座標系では0になり,見えてきませんが.ここで,\( \Gamma_{mn}^k \)というのはChristoffel記号という,非テンソルです.
 では,これが出てくる理由は何か.それは,基底が座標に依存するためです.直交座標では,どこまでいっても基底は一定だったので,微分に引っかからず,成分だけの微分になっていました.例えば,こんな具合です.
$$
\delta \boldsymbol{A} = \delta (A^n \boldsymbol{e}_n) = (\delta A^n) \boldsymbol{e}_n.
$$
しかし,基底が座標に依存するとすればそうもいかず,次のようになります.
$$
\delta \boldsymbol{A} = \delta (A^n \boldsymbol{e}_n) = (\delta A^n) \boldsymbol{e}_n + A^n (\delta \boldsymbol{e}_n).
$$
ここで,第二項を次のようにおきます.
$$
\delta \boldsymbol{e}_n = \D{x}^m \Gamma_{mn}^k \boldsymbol{e}_k.
$$
ここで\( \Gamma_{mn}^k \)は先ほど出てきたChristoffel記号です.こうすると,
$$
\begin{eqnarray*}
\delta \boldsymbol{A} &=& (\delta A^n) \boldsymbol{e}_n + A^n (\delta \boldsymbol{e}_n) \\
&=& (\delta A^n) \boldsymbol{e}_n + \D{x}^m A^n \Gamma_{mn}^k \boldsymbol{e}_k \\
&=& (\delta A^n) \boldsymbol{e}_n + \D{x}^m A^k \Gamma_{mk}^n \boldsymbol{e}_n \\
&=& (\delta A^n + \D{x}^m \Gamma_{mk}^n A^k) \boldsymbol{e}_n
\end{eqnarray*}
$$
になります.上式の括弧内が,冒頭に示した共変微分です.\( \D{x}^m \)で割り,次のように書きます.
$$
\nabla_m A^k = \P_m A^k + \Gamma_{mn}^k A^n.
$$

Christoffel記号の求め方


 Christoffel記号の具体的な形は,\( \P_m \boldsymbol{e}_n = \Gamma_{mn}^k \boldsymbol{e}_k ,~ g_{mn} = \boldsymbol{e}_m \cdot \boldsymbol{e}_n \)を使って求められます.そこで,計量テンソルを微分したものを三つつくります.
$$
\begin{eqnarray*}
\P_m g_{nl} &=& \P_m (\boldsymbol{e}_n \cdot \boldsymbol{e}_l) \\
&=& (\P_m \boldsymbol{e}_n) \cdot \boldsymbol{e}_l + \boldsymbol{e}_n \cdot \P_m \boldsymbol{e}_l \\
&=& (\Gamma_{mn}^k \boldsymbol{e}_k) \cdot \boldsymbol{e}_l + \boldsymbol{e}_n \cdot \Gamma_{ml}^k \boldsymbol{e}_k \\
&=& \Gamma_{mn}^k g_{kl} + \Gamma_{ml}^k g_{nk}, \\
\P_m g_{nl} &=& \Gamma_{nl}^k g_{km} + \Gamma_{nm}^k g_{lk}, \\
\P_l g_{mn} &=& \Gamma_{lm}^k g_{kn} + \Gamma_{ln}^k g_{mk}.
\end{eqnarray*}
$$
次に,最初の式に二番目を足し,三番目を引きます.そうすると,
$$
\begin{eqnarray*}
\P_m g_{nl} + \P_m g_{nl} - \P_l g_{mn} = 2 \Gamma_{mn}^k g_{kl}, \\
\therefore \Gamma_{mn}^k = g^{kl} \frac{\P_m g_{nl} + \P_m g_{nl} - \P_l g_{mn}}{2}
\end{eqnarray*}
$$
を得ます.すなわち,Christoffel記号は計量テンソルの組み合わせから成ることがわかりました.

微分演算子


div,rot,grad,そしてラプラシアンなどを一般座標でどうなるかを見ていきましょう.

勾配


これは基底に依存しないので,共変微分は普通の微分に帰着されます.よって,
$$
\GRAD F = (\nabla_m F) = (\P_m F).
$$

発散


これは少し面白い形です.結果からいうと,
$$
\DIV \boldsymbol{A} = \nabla_m A^m = \frac{1}{\sqrt{g}} \P_m ( \sqrt{g} A^m ).
$$
ここで\( g = \det (g_{mn}) \)であり,計量テンソルの行列式です.その平方根\( \sqrt{g} \)は重積分などでおなじみのヤコビアンと同じものになります.これは直交座標では1なので,\( \DIV \boldsymbol{A} = \P_m A^m \)となっていたわけです.
 これの求め方を見ておきましょう.まず,
$$
\DIV \boldsymbol{A} = \nabla_m A^m = \P_m A^m + \Gamma_{mk}^m A^k
$$
ですが,この\( \Gamma_{mk}^m \)は簡単な形になります.
$$
\begin{eqnarray*}
\Gamma_{mk}^m &=& g^{\color{red}{ml}} \frac{\P_{\color{red}m} g_{k\color{red}l} + \P_k g_{lm} - \P_{\color{red}l} g_{{\color{red}m}k}}{2} \\
&=& \frac{1}{2} g^{ml} \P_k g_{ml} = \frac{1}{2} \frac{\P_k g}{g} = \frac{\P_k \sqrt{g}}{\sqrt{g}}
\end{eqnarray*}
$$
一行目の1, 3項は,\( m,~l \)を変えても変わらず,同じものになるので相殺します.二行目で\( g_{lm} \rightarrow g_{ml} \)とし,さらに行列式の微分公式\( \P_k g = g g^{mn} \P_k g_{mn} \)を使いました.これを元の式に戻せば
$$
\DIV \boldsymbol{A} = \P_m A^m + \frac{\P_m \sqrt{g}}{\sqrt{g}} A^m = \frac{1}{\sqrt{g}} \P_m ( \sqrt{g} A^m ).
$$

スカララプラシアン


本記事の本題です.これは先ほどの勾配と発散を組み合わせればよいのです.
$$
\begin{eqnarray*}
\triangle F &=& \DIV \GRAD F = \DIV ( \P_m F ) \\
&=& \frac{1}{\sqrt{g}} \P_m ( \sqrt{g} \P^m F ) \\
&=& \frac{1}{\sqrt{g}} \P_m ( \sqrt{g} g^{mn} \P_n F ).
\end{eqnarray*}
$$
最後に,反変ベクトルを計量テンソルを使って共変ベクトルに直しました.案外簡単に導けます.

微分演算の例


二次元極座標\( (r,~\phi) \)
$$
\begin{eqnarray*}
(g_{mn}) &=& \begin{bmatrix} 1 & \\ & r^2 \end{bmatrix}, \qquad \sqrt{g} = \sqrt{|(g_{mn})|} = r, \\
\triangle F &=& \frac{1}{\sqrt{g}} \P_m ( \sqrt{g} g^{mn} \P_n F )
= \frac{1}{r} [\P_r~ \P_\phi]
\left( r \begin{bmatrix} 1 & \\ & 1/r^2 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} \P_r \\ \P_\phi \end{bmatrix} F \right) \\
&=& \frac{1}{r} \P_r (r \P_r F) + \P_\phi^2 F.
\end{eqnarray*}
$$

Omake::作用積分の利用


スカララプラシアンを求めるのに,Poisson方程式の作用積分が使えます.まず,Poisson方程式というと,
$$
\triangle \phi = J
$$
です.あるいは,
$$
\P_k \P^k \phi - J = 0
$$
とも書けます.これを導く作用は,直交座標では
$$
S[\phi] = \int \mathrm{d}t \mathrm{d}^3x \left( \frac{1}{2} \P_k \phi \P^k \phi + J \phi \right)
$$
です.ここで,体積要素\( \mathrm{d}^3x = \mathrm{d}x \mathrm{d}y \mathrm{d}z \)です.しかし一般座標では体積要素は単純に\( \mathrm{d}^3x \)とならず,ヤコビアン\( \sqrt{g} \)を付けて\( \sqrt{g} \mathrm{d}^3x \)になります.したがって,
$$
\begin{eqnarray*}
S[\phi] = \int \mathrm{d}t \mathrm{d}^3x \sqrt{g} \left( \frac{1}{2} \P_k \phi \P^k \phi + J \phi \right)
= \int \mathrm{d}t \mathrm{d}^3x \sqrt{g} \mathcal{L}
\end{eqnarray*}
$$
と書きかられます.この,被積分関数はLagrangian密度なので,これをEular-lagrange方程式に代入し,Poisson方程式を導いてみよう.
$$
\begin{eqnarray*}
\P_k \RDF{\sqrt{g}\mathcal{L}}{\P_k \phi} - \RDF{\sqrt{g}\mathcal{L}}{\phi} &=& \P_k (\sqrt{g} \P^k \phi) - \sqrt{g} J = 0, \\
\therefore \frac{1}{\sqrt{g}} \P_k (\sqrt{g} \P^k \phi) - J &=& 0.
\end{eqnarray*}
$$
したがって,元のPoisson方程式と比較すると,
\[
\triangle \phi = \frac{1}{\sqrt{g}} \P_k (\sqrt{g} \P^k \phi)
\]
を得ます.

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